スコッチ 淡雪 忍者ブログ
性癖だだ漏れ
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 暖かい。
 甘い春風の香りを鼻に掠め、冬が終わる事を悟る。時間とは憎い程順調に流れ、そして決して止まることはないのだ。
 もう僅かの命だな、とレティは感じた。
 冬の化身である私は、冬でしか存在できない。冬が全てなのだ。春が来れば、私は事実上消滅する。其が輪廻であり絶対真理である。いや、其については文句は無い。冬が来なくては人間はいずれ死滅してしまう。時間が経てば、再び冬は巡る。再び冬を迎えた時、私はまたこの大地に足をつける。だから、其はいいのだ。が、人は皆冬を咎め、春を称える。判っている当たり前の事だ。眠りの冬と、目覚めの春。比べるまでも無く春を望む人間の方が多いに決まっている。判っている。人が憎い訳では無い。春が妬ましい訳では無い。ただ・・・。
「レティ…」
「チルノ?どうしたの?」
 振向くとチルノが居た。
 氷精の気配を悟れないとはね。ここまで侵食が進んでいたのか。
 仮にも季節の化身であるこの私が気付かない。冬は確実に死に向かっている。
「そんな顔しないで」
 チルノの重く沈んだ表情に胸を痛める。彼女はいつだって、誰が為に心を痛め、誰が為に悲しんでくれる。心優しい気遣いに、少しだけ目に涙を溜める。
「お願い、泣かないで」
 少し強めに抱きつく。
 離れたくない。別れたくない。手放したくない。そんな想いを胸に強く抱きしめる。
「泣かないで」
 チルノは繰り返して抱き返す。
「悲しいよね。寂しいよね」
「チルノと離れたくないよ」
-私もだよ、耳元で囁いて腕に力を込めた。
「離れたくないよっ…」
 溢すまいと我慢していた涙も限界に達した。
 嗚咽と共に雫が流れ落ちる。
 冬でしか存在出来ないこの身が憎い。
 刹那に流れる時間が確実に春へと巡る。
 季節は必ず廻るから。
「また、冬は来るから」
「…」
「必ず冬は迎えるから」
「季節は必ず廻るから」
 季節は必ず廻るから。
「また、会いましょう」
 チルノがぼろぼろと涙を溢れさせ、笑っていた。

「ずっと、待ってるよ」




冬が終わる。
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