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性癖だだ漏れ
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「幸せ?」

 気がつけば彼女に夢中で。
 適当な理由考えては何かと傍に居た。
 
 当然いつかは気持ちに気付かれる訳で。
 彼女は冗談半分に聞いてくる『好きなの?』。
 『うん』彼女の前だけは素直になろう。
 驚いて、紅潮させて、背を向けて『そっか』。
 唇を重ねて。
 体躯を合わせて。
 永遠を誓った。

「うん」
 
 種族の違い。
 立場の違い。
 寿命の違い。
 様々なすれ違いが私達を引き裂こうとする。
 淡く儚い彼女の命。
 続く限り愛し続けよう。

「幸せだよ」

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「相変わらず、賑わってないのですね」
「挨拶だな紫」
 紫はまるで最初から居たかのように隣の椅子に座って紅茶を嗜んでいた。
 突然現れるのは既に慣れてしまったようで、冷静な自分に驚いた。
 読み途中の本を栞も挟まずに閉じる。
 どうせ停滞した時間を流す為だけに読んでいたものだ。
「久しぶりです」
「それだ。君はここ一週間も来なかった」
 以前は毎日のように来ていた。
 だが一週間前に突然来なくなった。
 あまりに突然で。
 焦って聞き回った。
 だが所在は掴めなくて。
 途方に暮れる僕の肩を叩いたのは、博麗の巫女だった。
『3日程、本でも読んで時間潰していればひょっこり現れるわよ』
 なんでも無い様にそう言うものだから。
 勘の良い彼女を信じてみたくなる。
『お幸せに』
 何のことかも判らずに言葉を受け取って待ち続けてみた。
 そして3日後の今日、紫は実際に来た。
「心配させてしまったみたいですね」
「うん心配した」
「そう」
 顔を紅潮させて満足そうに微笑んだ。
 以前は常に独りで過ごしていた。
 独りでいるのは当たり前で、生涯独りだろうと思っていた。
 いつしか隣に君が居て。
 君が居るのが当たり前になっていて。
「心配した」
 繰り返した。
 居るはずの君が居ないのが、こんなにも自分を不安にさせる。
 いつだって傍に。
「傍に居て欲しい」
 離れて気付いたこの気持ちは、恋と呼ぶのだろう。
 離れなくては判らない程に、当たり前に居た君が。
「好きだ」
 傍に居てくれる幸せを知ってしまった。
 離れる事による寂しさを知ってしまった。


「ねぇ霖之助さん・・・。受け取って欲しいものあるのですが・・・」
 暖かい。
 甘い春風の香りを鼻に掠め、冬が終わる事を悟る。時間とは憎い程順調に流れ、そして決して止まることはないのだ。
 もう僅かの命だな、とレティは感じた。
 冬の化身である私は、冬でしか存在できない。冬が全てなのだ。春が来れば、私は事実上消滅する。其が輪廻であり絶対真理である。いや、其については文句は無い。冬が来なくては人間はいずれ死滅してしまう。時間が経てば、再び冬は巡る。再び冬を迎えた時、私はまたこの大地に足をつける。だから、其はいいのだ。が、人は皆冬を咎め、春を称える。判っている当たり前の事だ。眠りの冬と、目覚めの春。比べるまでも無く春を望む人間の方が多いに決まっている。判っている。人が憎い訳では無い。春が妬ましい訳では無い。ただ・・・。
「レティ…」
「チルノ?どうしたの?」
 振向くとチルノが居た。
 氷精の気配を悟れないとはね。ここまで侵食が進んでいたのか。
 仮にも季節の化身であるこの私が気付かない。冬は確実に死に向かっている。
「そんな顔しないで」
 チルノの重く沈んだ表情に胸を痛める。彼女はいつだって、誰が為に心を痛め、誰が為に悲しんでくれる。心優しい気遣いに、少しだけ目に涙を溜める。
「お願い、泣かないで」
 少し強めに抱きつく。
 離れたくない。別れたくない。手放したくない。そんな想いを胸に強く抱きしめる。
「泣かないで」
 チルノは繰り返して抱き返す。
「悲しいよね。寂しいよね」
「チルノと離れたくないよ」
-私もだよ、耳元で囁いて腕に力を込めた。
「離れたくないよっ…」
 溢すまいと我慢していた涙も限界に達した。
 嗚咽と共に雫が流れ落ちる。
 冬でしか存在出来ないこの身が憎い。
 刹那に流れる時間が確実に春へと巡る。
 季節は必ず廻るから。
「また、冬は来るから」
「…」
「必ず冬は迎えるから」
「季節は必ず廻るから」
 季節は必ず廻るから。
「また、会いましょう」
 チルノがぼろぼろと涙を溢れさせ、笑っていた。

「ずっと、待ってるよ」




冬が終わる。
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